熊本地方裁判所 昭和56年(わ)16号 判決 1981年4月24日
裁判所書記官
川本章
本籍
熊本市下通二丁目一番地一
住居
同市下通二丁目一番三二号
会社役員
土師榮一
大正一一年三月二三日生
主文
被告人を懲役八月及び罰金三〇〇万円に処する。
但し、この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
右罰金を完納できないときは、一日を金五、〇〇〇円に換算した期間被告人を労役場に留置する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、熊本県熊本市下通二丁目一番三二号ほか二か所において、衣料品販売業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を正規の帳簿に記載しないで除外しあるいはたな卸金額の一部を除外するなどの不正手段により、所得の一部を秘匿したうえ、
一、昭和五二年分の総所得金額は三、九四六万三、八四七円で、これに対する所得税額は一、八一一万六、二〇〇円であるにかかわらず、同五三年三月一五日、同市三番地一五所在の熊本東税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は八六二万七、三七二円であって、これに対する所得税額は一八一万四、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同五二年分の正規の所得税額一、八一一万六、二〇〇円との差額一、六三〇万二、〇〇〇円を免れ、
二、同五三年分の総所得金額は三、七一九万五、〇一一円で、これに対する所得税額は一、六七三万九、八〇〇円であるにもかかわらず、同五四年三月一四日、前記熊本東税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は八八〇万三、二三一円であって、これに対する所得税額は一八七万一、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同五三年分の正規の所得税額一、六七三万九、八〇〇円との差額一、四八六万七、九〇〇円を免れ、
三、同五四年分の総所得金額は一、九八九万七、二四九円で、これに対する所得税額は六七七万二、八〇〇円であるにかかわらず、同五五年三月一〇日、前記熊本東税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は六一五万二、六七一円であって、これに対する所得税額は八八万三、六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同五四年分の正規の所得税額六七七万二、八〇〇円との差額五八八万九、二〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
本件公判調書中の証拠等関係カードの標目番号を引用する。
判示全事実につき
一、被告人の当公判廷における供述
一、1ないし7、11ないし47、50ないし70、72ないし80、82ないし86
一、押収した手帳二冊(昭和五六年押第二三号の二、三)、メモ帳(同号の三)、賃貸借契約書(同号の一三)、不動産売買契約書(同号の一四)、土地付建物売買契約書(同号の一五)、青色申告者書類綴(同号の一七)
判示一の事実につき
一、8、81
一、押収した手帳(同号の一)、総勘定元帳(同号の五)、出納帳(同号の八)、メモ一綴(同号の一〇)、五二年度分の確定申告書(同号の一八)
判示二の事実につき
一、48、71、81
一、押収した総勘定元帳(同号の六)、出納帳(同号の九)、五三年末棚卸表(同号の一一)、墓地領収書外一綴(同号の一六)、五三年度分確定申告書(同号の一九)
判示三の事実につき
一、8ないし10、48、49
一、押収した総勘定元帳(同号の七)、棚卸表(同号の一二)、五四年度分確定申告書(同号の二〇)
(法令の適用)
判示各所為 所得税法二三八条一項
併合罪の処理 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条により判示一の罪の懲役刑に法定の加重をし、罰金については同法四八条一項、二項により罰金の合算額の範囲内で右懲役刑に併科する。
執行猶予 同法二五条一項
労役場留置 同法一八条
訴訟費用の負担 刑事訴訟一八一項本文
(出席検察官 坂本邦彦)
(裁判官 酒匂武久)